きみは誤解している(佐藤正午)の書評・感想

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きみは誤解している (小学館文庫)

本書は『競輪』をモチーフにした6編の短篇集です。と書くと、ギャンブルの話かぁ、競輪には興味ないしなぁ、という方がいるでしょうけど、後で書くつもりですけど、競輪自体に興味がなくても全然大丈夫です。

「きみは誤解している」
僕は、婚約者のマリに、競輪を止めるようにたしなめられる。いつもだ。僕はいつもこう答える。競輪は趣味でしかないし、ギャンブラーになろうとなんて思っていない。しかし、マリはそれを信じない。僕は何度も、「きみは誤解している」と言わなくてはならない。
実際僕は、ギャンブラーと言えるほど競輪にのめり込んでいるわけではない。
すべてのきっかけは、父の容体が急変したことにあった、と思う。マリの両親に顔合わせをする予定は先延ばしになった。
ある時僕は、父が競輪雑誌に挟み込んでいた車券を見つけた。父がハズレ券を挟んでおくわけがない。そう直感した僕は、その車券を持って競輪場に行く。

「遠くへ」
しがない作家をやっている私は、競輪場でその女性と親しくなった。彼女は川野と名乗り、彼女は、自身がどのように競輪にはまっていったのかを私に語った。30歳に手が届こうという年齢の時、付き合っていた男の影響で始めた競輪は、彼女の人生を大きく変えた。
彼女の人生を大きく変えた人物がいる。競輪場で出会ったその老人とのやり取りが、彼女を、本物のギャンブラーにしたのだ。

「この退屈な人生」
自分は、成り行きで自衛隊に入って4年間続け、それから除隊し、かなり貯まった貯金を元に、特に仕事をするわけでもなく過ごしていた。間隔は様々ながら、二ヶ月ほど何も手をつけられずただ食べるしかない、という時期が必ずやってきて、それが終わると自分は体重が6キロ落ちている。
自分は、競輪の稼ぎで生活をしている。どうも自分には才能があるようで、ほとんど負けることがない。
中村章太郎と出会ったのは、図書館でだった。自分は覚えていなかったけど中学時代の同級生で、章太郎と会う時は常に自分がお金を出していた。

「女房はくれてやる」
暖簾分けしてくれた寿司屋の大将の口癖は「ギャンブルは人生を狂わす」だったから、おれは隠れてこそこそと競輪をやっていた。もちろん女房にもだ。
ある日女房の兄が亡くなったという知らせを、おれが電話で受けてしまった。それを女房に伝える際に言ってしまった余計なひと言が、すべてのきっかけだったかもしれない。
女房の葬儀の日、おれはちょっと抜けだして車券を買った。で、女房にバレた。

「うんと言ってくれ」
わたしは、鷹彦さんに言われた「ギャンブル感覚の優れた人間がいる。君はそのまれな一人だ」という言葉を、その言葉だけは信じようと決めている。
小学生の時に車券を買って当てた。競輪場に通いつめるようになったのは高校生の頃からだ。子供の頃から、賭け事的なことには滅法強かったけど、それは競輪場でも遺憾なく発揮された。
鷹彦さんと出会ったのも、競輪場でだ。大成功(おおなり いさお)という、元々姉の旦那だった競輪選手のことを高く買っている鷹彦さんと競輪の話をして、わたしは鷹彦さんに会えるのを待ち遠しく思うようになった。

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