銭の戦争 1巻(波多野聖)の書評・感想

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銭の戦争 第一巻 魔王誕生

本書をどんな風に紹介するのか、もんのすごく難しいのだけど、さわりの部分と、最後どんなところに話が着地するのか、そして主人公は一体誰なのか、という部分について断片的に触れることで内容紹介に変えようと思います。
物語は、日露戦争を戦う上で必要となる戦費を諸外国から集める、日本銀行副総裁・高橋是清の活躍から始まる。
当時日本は小国で、しかもロシアに宣戦布告しつつも、大国ロシア相手に勝てるはずがない、と思われていた。そんな中で、戦費を諸外国からかき集めるために国債を売るというのは恐ろしい難事業だった。しかし、高橋是清はそれを成し遂げる。高橋是清の功績は大だが、しかしその背景には、時代の幸運もあった。
あるユダヤ人の富豪が動いたのだ。
ジェイコブ・シフと名乗るそのユダヤ人は、ロシアに対してある不満を抱えており、ロシアに対して宣戦布告をした日本を支援することに決める。ロシアの皇帝・ニコライ二世が抱える特殊な事情を明かしつつ、日本・ロシア・ユダヤ人の三者の思惑が錯綜していく。
本書は、井深享介という一人の若者の物語だ。日露戦争の話からどのように井深享介の話になるのか、そして井深享介とは何者なのか、という話は割愛することにしよう。
本書は最後どこにたどり着くかと言えば、明治40年前後の日本に置ける株の大相場の描写までである。そこで何が起こるのかも、書かないでおこう。井深享介という一人の青年が、どんな生い立ちの中で何を学び、どんな高みにまでたどり着くのか、そしてさらにそこからどこを目指そうとするのか。そういう物語です。
いやー、ホントに面白かった!正直、まったく期待してなかったんです。全然期待してなかった。経済を扱った小説は得意ではないし、本書ではその次代を彩った(だろう)様々な人物が実名で登場するのだけど、歴史に疎い僕はそれらの人がどんな人で何をしたのか全然知らない。そういう状況で読み始めたのだけど、まあこれが滅法面白い!ちょっとびっくりしました。
読み始めた時は、ちょっと無理かなと思ったんです。だって、ロシアの皇帝・ニコライ二世の話とか出てくるし、日露戦争の戦費を諸外国からかき集めてくるって話は全然知らなかったんで面白かったんだけど、でもこの物語がどこに向かっていくのかがまるで想像できなくて、ちょっとこれは厳しいかなと思いながら読み始めたのでした。
でも、どんどん面白くなる。
本書の面白さのメインは、やっぱり経済的な話です。でも、初めはそういう描写が少ない。最終的に、株の相場の話までたどり着く物語なんだけど、読み始めからしばらくの間は、もちろん少しは経済っぽい話も出てくるんだけど、でもそういう描写はかなり抑えられている。後でも触れるけど、初めの内は、登場人物とか舞台設定とかをかなりきちんと描写するために結構心血を注いでいる感じで、経済小説はちょっとなぁ、とか思うような人でもかなりとっつきやすい作りにはなっているかもしれません。
しかし何にせよ、後半怒涛のように展開されていく株の相場の話は面白い!僕はホントに経済の話って全然分かんなくて、「売り注文」とか「買い注文」なんて話も、ちゃんと考えればわかるんだけど、物語を読んでいる過程でするっと理解できるほど理解してるわけじゃない。特に、「売り注文」ってのが難しい。だって、手元にその株を持ってなくても売れちゃうんですよ!?(「空売り」というらしい)。いや、ちょっと時間を掛けて頭を使えば、なるほどそういうことかってまあわからなくはないんですけど、それでも僕にはやっぱり、経済とか株の話は難しい。

感想

ちょっとこれ、話がこれからどんな風に展開していくのか、気になって仕方ありません。正直なところ本書は、井深享介という男のプロローグ的な位置づけでしょう。恐らく次巻以降、井深享介の本領がはっきされるという形になるんじゃないかな、と思います。もちろん本書の、井深享介のプロローグ的な物語も実に面白いんですけど、続きがどうなるんだろうなぁ、という興味を結構強く掻き立てられる作品だと思います。
経済の小説かぁ、しかも舞台は現代じゃないのね、あんまり知らない作家だけど主人公が実在の人物って大丈夫かな…とか、まあ色々不安にさせる作品ではあると思います。ただ、経済とか歴史が苦手な人(まさに僕がそうです)でも充分楽しめる作品だと思います。これからどんな風に話が展開していくのか楽しみでしかたありません。是非読んでみて下さい。

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