ホットスポットの書評・感想

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ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図

本書は、NHKで5月15日に放送された「ネットワークでつくる放射能汚染地図」という番組の取材班による、福島原発事故の取材を描いたノンフィクションです。
このETVの特集について僕は、「プロメテウスの罠」という作品で知りました。
勝手な判断で被災地で放射能を測ってはいけない、という通達を出す所属していた研究所を即座に辞め、独自の判断で震災後すぐに被災地に入り各地の放射能を測定した、木村真三という研究者がいる。そしてNHKには、かつてチェルノブイリなど複数の放射能に関係する取材を手がけ、しかしそれによって左遷され番組制作の現場から離されてしまった七沢という男がいる。二人は、震災直後から被災地入りし、何が出来るのかわからない中で福島県で取材を続ける中で、専門家による詳細な放射能汚染地図が必要であると判断。政府が「ただちに影響はない」と繰り返す中で、高濃度の放射能に汚染された土地に残された人たちの姿を追いつつ、一方で、日本における放射能測定の第一人者と共に、福島県の放射能汚染地図を作成していく過程を描くノンフィクションだ。
章毎に筆者が変わり、各章でどんな話が描かれるのかもざっと書きたいのだけど、それ以上に書きたいことがあるので、どんな内容なのかについてはざっと書くだけに止めようと思う。
まず本書で扱われるのは、大まかに分けて二種類ある。一つは、被災地における放射能汚染の実態とその計測。そしてもう一つは、その中で避難あるいは生活をする人々への取材である。
放射能汚染の実態については、後で詳しく触れるつもりだけど、普通の人が想像・想定する状況を遥かに超えている。僕は原発関係の本を読むと、震災直後の自分自身の、情報に対する判断の甘さを思い知らされることになる。震災直後僕は、政府が繰り返す「ただちに影響はありません」をそのまま信じていたわけではないけど、でもそこまで酷いということはないのだろう、というある種楽観した感覚を持っていた。しかし、それはまったく違う。後でも触れるけど、本書では、あのチェルノブイリの事故と比較される表現が、もの凄く多い。
そして、避難者や生活者の描写は、やはり身につまされるものがある。もう既に僕は、日常の中で原発被災者のことを意識する機会が減ってしまっている。それは、認めざるを得ない。言い訳をするつもりもない。やはり僕にとっては、他人事なのだろう。でも、それではいけないと思う。だから僕は、こうして時々本を読む。知りたいと思う。
そして、本書が「プロメテウスの罠」と大きく違う点は、作中で「取材する側の声・感情・想い」が多々綴られることだ。「プロメテウスの罠」では、現地で生きる人たちの姿に焦点を当て、取材者自身の姿というのは、文中からはそこまで強く立ち上らなかったように思う。あくまでも、現地で生きる人々の姿を活写したい、という方針だったのだろう。本書では、取材する側の不安や葛藤、正直な気持ちなどが、様々な場面で散りばめられている。そこが大きな違いだと感じた。どちらがいいというわけではない。本書と「プロメテウスの罠」を比べれば、どちらがより衝撃を受けたかと聞かれれば「プロメテウスの罠」の方だと答える。ただ、取材する側の心情というものがリアルに刻まれている本作は、震災直後「大本営発表」に終始しがちに思えたマスコミの中で、これだけ気骨のあるマスコミがいたのだなと思え、それが凄くよかったと思う。

感想

僕は、自分の中で福島第一原発の事故が「歴史」になってしまう前に、多くのことを知りたいと思う。知っておかなければならないと思う。
それは、自分のためでもあるし、そして未来の日本のためでもあると思う。僕たちは、一人一人は何が出来るわけでもないかもしれない。でも、将来のいつかのために、『過去こんなことがあったのだ』と主張できるくらいに、僕たちはこの現実を覚えていなくてはいけないと思う。国が何をし、そして何をしなかったのかについて、はっきりと記憶しておかなくてはならないのだと思う。だからこそ僕はきっと、これからも原発に関する本を時々読むだろう。
是非読んでください。僕たちが覚えているために。また何かあった時に、国に「No」をつきつけられるように。正しい世の中になるように。

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