アイ・コレクターの書評・感想

1229views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)

アレクサンダー・ツォルバッハは、かつてベルリン警察に所属し、『交渉人』として多大なる貢献をしたが、とある事件をきっかけに警察を辞め、現在は大手新聞社の犯罪担当記者として精力的に取材をこなしている。
彼は、三ヶ月前からベルリン中を震撼させている、とある凶悪事件を追っていた。
その連続殺人犯は、<目の収集人>と呼ばれている。<目の収集人>は、子供を拉致し、その母親を殺してストップウォッチを握らせる。そして、<目の収集人>が設定した時間内に父親が子供を見つけ出すことが出来なければ、子供を殺害しその左目を抉り取る。既に犯行は何度も繰り返されるも、警察はまったく手がかりを見つけ出すことが出来ずにいた。
<目の収集人>の新たなる事件が起こった直後、ツォルバッハはその現場へと急行した。警察無線を傍受していたのだ。息子の誕生日が迫っている中だったが、彼の<目の収集人>に関する取材には定評があり、ツォルバッハは迷うことなく現場に急行したのだ。
しかしそのことがきっかけで彼は、古巣の同僚で警部であるシュトーヤに、<目の収集人>事件の容疑者だと思われてしまう。罠に嵌まったのだ。ツォルバッハは、誰もその存在を知ることのない隠れ家に逃げ込み対策を練ろうとするが…。
突然ツォルバッハの元に現れた盲目の物理療法士・アリーナの特殊な能力に半信半疑のまま導かれながら、ツォルバッハは、警察から逃げながら<目の収集人>を追い詰め、制限時間内に子供を救出しようとする…。
というような話です。
これは面白かったなぁ!セバスチャン・フィツェックの作品を読むのは四度目なんだけど、この作家は基本的にレベルが高い。作品ごとに好き嫌いはあるけど、大量の仕掛けと謎と魅力的な展開を盛り込みながら、一気に読ませるスタイルはどの作品でも健在で、本書も、その圧倒的なスピード感には驚かされる。
なにせ、本書を読み始めてまず驚くのは、ノンブル(ページ番号)が逆に振られていることだ。本書は、一番初めのページを開くと「405」と書かれており、そこから物語が進むにつれてページ番号が若くなっていく。物語もエピローグから始まる(とは言え、物語は時系列順に進んでいく)。この仕掛けは、僕の解釈が間違っていなければ、最後の最後に「そういうことか!」という感じになる。あの事実が、ラストで反転することで、物語が一気に変質する。セバスチャン・フィツェックの作品には常に仕掛けが満ちているけれども、それを複雑にし過ぎない形で読者に提示してくれるというのも、また魅力的だと思う。
セバスチャン・フィツェックの作品は、仕掛けやら魅力的な展開やらが多すぎて、なかなか内容に触れるのが難しいという点が実に残念なのだけど、まあ仕方ない。ツォルバッハは、警察から追われながら、盲目の女性の『妄言』を手がかりに、<目の収集人>を追い詰め、さらわれた子供を救出しようとする。その絶望的な状況下の中で、さらに不可解な出来事や極限状況がふんだんに盛り込まれていく。さらわれた子供の視点や、彼らを追う警察の視点、はたまた<目の収集人>からのメールの文章など、様々な視点を盛り込みながら、事件発生から<目の収集人>の設定した制限時間までという実に短い間の出来事だけで物語が進んでいく。そういう意味では、ちょっと『24』に似てるかも(『24』は見たことないけど)。

感想

仕掛けや謎に触れられないので、内容にあまり踏み込めず、ちょっと感想が短くなっちゃうんだけど、ミステリとして、そしてエンタメとして、この作品は相当にレベルが高いと思います。エピローグから始まるなど魅力的な仕掛け、読み進めるに従って深まっていく謎、極限状況に何度も追い込まれるスピード感のある展開。どれをとっても見事な作品だと思います。セバスチャン・フィツェックはよく『治療島』という作品が評価されるけど、僕は『ラジオ・キラー』がメチャクチャ好きです。是非そっちも読んでみてください。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く