「6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録」 地元住民のため「手書きの壁新聞」

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6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録  角川SSC新書 (角川SSC新書 130)

概要

東日本大震災の津波で印刷不能となった、宮城の石巻日日新聞社。
自らも被災する中、地元住民のため「手書きの壁新聞」で必死に発行を続けた。

前半は社長が壁新聞発行の経緯と、6回に及んだ発行を回想。
後半は6人の記者の、震災直後の行動を時系列で追う。

手書きの壁新聞

■3月11日
14:46激しい揺れで停電した。記者が取材に走る。15:40津波が社屋に到達し、輪転機が一部浸水。流されてくる家や車に茫然とする。夕方に水位が低下、自転車で町へ出る。ひどい。やがて満天の星に。火災で東の空が赤く染まり、時々爆発音がして不気味。

大勢の被災者が状況を知りたいはずだ。「今伝えなくては地域の新聞社の存在意義がない」。新聞用ロール紙とペンを用意し、報道部長と相談して壁新聞の発行を決意する。車中泊。

■3月12日
5:00に目覚めた。自転車で周囲の惨状を確認。親族の無事を祈り、涙する。社に戻り、市役所・災対本部に詰めている記者の情報をまとめ、壁新聞作成に入る。第1号は、まず事実の伝達に徹しよう。見出しは

「日本最大級の地震・大津波」
M8・8 最大震度7 石巻地方6強

5か所の避難所へ貼り出しに向かう。夜、地震後初の食事。車中泊。

■3月13日
5:30起床。被害を正門に貼り出すと人だかりができる。一時帰宅を望む社員も出てきた。ヘドロと瓦礫が散乱する街へ、無理するなと送り出す。より詳細な被害情報が把握可能になった。が、読む者の心情を考え、新聞では踏み込んだ内容は避ける。見出しは

「各地より救難隊到着」
被害状況が徐々に明らかに/電気からライフライン復旧へ

■3月14日
急激に各地の惨状が判明してきた。しかし新聞は希望の持てる内容にしたい、と物資や行政の動きをメインにする。見出しは

「全国から物資供給」
余震に注意/安否確認

熊谷記者の行方がまだつかめず。

■3月15日
携帯やメールはつながるようになったが、インフラ復旧はまだまだ。女川町の蒲鉾会社社長を訪ねる。近くの避難所で母と再会。実家は流されたが命は助かった。4日目の見出しは

「ボランティアセンター設置」
安否情報を放送/介護ボランティア求む/商店主らが炊き出し

■3月16日
街中を見て回る。初対面の人でも、知人のように自然と会話が生まれる。一方で、記者の疲れはピークに。見出しは励ましを込めて

「支え合いで乗り切って」
全国から激励のメッセージ/女川町5千人安否不明

■3月17日
会長宅でプリント可能に。並行してA4判500枚も発行する。使命感に突き動かされるのみ。見出しは

「街に灯り広がる」
電気復旧1万戸超す/希望が見えてきた!避難所にも通電開始

結果的にこの日が最後の壁新聞となる。

■3月18日
11:00、電気が復旧! A4判のみの発行に切替え。

■3月19日
ついに輪転機が回る。通常刷り復帰の大見出しは「皆でがんばっぺえな」。避難所に被災者がいる限り無料配付と決める。

6人の記者の記録

■水沼記者
・地震時は裁判所。消防本部で取材するも、混乱で話が聞けない。津波を撮影。翌日、東松島市の災対本部や小学校を取材。夜、両親に再会。妹安否不明。

■横井記者
・地震時は社内。市内の様子を取材し避難所に向かう。緊急地震速報のたびに屋外へ。ワンセグで情報を集めるが、気仙沼や千葉のコンビナート火災ばかり。

■外処記者
・地震時は社内。市役所へ取材し泊まり込む。翌朝、1.5mの冠水で外に出られない。壁新聞作成用の情報を横井記者に託す。妻の安否が気がかり。

■熊谷記者
・地震時は東松島市議会事務局。帰社途中に津波にのまれ、死を覚悟するも運よく浮上。船に乗り込み一夜を明かす。翌朝ヘリに救助され、入院。

■秋山記者
・地震時は社内。日和山に登って取材後、車で移動中に津波に気づく。渋滞。車を捨て山を駆け上がる。振り返ると津波。市役所の災対本部へ。

■平井記者
・地震時は社内。石巻高校を取材し日和山へ。直後に津波。避難所を取材後、市役所の災対本部へ。大手紙に遅れを取りたくない。翌日壁新聞の作業。忸怩たる思い。

心に届く報道とは

地震直後、被災者が欲したのはまず個人の安否情報だ。次に被災地域の情報。
詳細な被災情報はあえて省いた。避難所で待つ人々の心境を考えて。

避難者の体験談を分析して記事にしたが、裏が取れず取捨選択は困難を極めた。
また、全国メディアでは、沿岸小集落の情報は置いていかれた感がある。

地区壊滅イコール新聞経営の危機。が、今こそ伝えなければ存在する意味がない。
改めて「地域の絆」が大事だと再確認した。

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