異性(角田光代+穂村弘)の書評・感想

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異性

本書は、作家の角田光代と、歌人の穂村弘が、お互いの経験や価値観や観察などを通じて、異性に対する不思議、疑問、そして自分なりの解釈などを、往復書簡の形式でやり取りしたものをまとめたもの。始めっから最後まで話題が連続しているわけでもないけど、基本的には前回の相手の文章を受けて文章が展開されていく。「異性について」という以外明確なテーマ設定があったわけでもないだろうこの往復書簡は、しかし異性についてものすごく深く掘り下げ、両者の間に横たわる溝や、埋まることのない差を明確にしていく。読んでて、「うわぁー!そうそう!」と思う場面がメチャクチャ多くて、読んでて凄く色んな感情に襲われる作品だった。楽しいけど、怖い。共感できるけど、拒絶したい。分かるけど、分かりたくない。みたいな。
読んでて共感できる部分が凄くたくさんあったのだけど、それは決して、「穂村弘が男を代表して描く事柄」だけに留まらない。
僕は割と色んな人に、「(男にしては)女性的な感覚があるね」と言われることが多いのだけど、もちろんだからと言って角田光代の言っていることにことごとく賛同できるというわけではもちろんない。というかやっぱり、女性側の話は、「話としては理解できるけど、受け入れられない」というものが多い。でもやっぱり、女性についての描写の中にも、「分かるわぁ!」ってものも出てくる。
その一方で、穂村弘が描く男の側の話に、常に全面的に賛同できるわけでもない。穂村弘の言っていることには、なんか凄く共感させられることが多いのだけど、でもそれは、冷静に分析してみると、「穂村弘の人間観察眼」に驚嘆しているだけなんだな、ということがある。やっぱり、全部はわからない。でもやっぱり、大抵は分かる。
読んだ人にはみんな大体こういう感覚、つまり、男女両方ともの意見に賛同できる部分もあれば賛同できない部分もある、という感じではないかと思う。角田光代の言ってることには完璧に賛同で、穂村弘が言う男の話は???だらけ、という女性は多くはないだろうし、その逆もまた多くはないだろうと思う。
また僕は、角田光代と穂村弘の主張の根底を成すものが凄く気になった。僕の勝手な判断では、角田光代は「自分のことを中心にして他者と比較すること」が中心であるのに大して、穂村弘は「自分のことも話けど他者観察が中心」という感じがする。そしてこの差は、「角田光代は『ザ・女』であるが、穂村弘は『ザ・男』ではない」という事実に依るのではないか、という気がしてしまう。
この、「角田光代は『ザ・女』であるが、穂村弘は『ザ・男』ではない」というのは、本書を読めばなんとなくわかってもらえるのではないかと思う。この組み合わせも、作品に大きく影響を与えていると思う。『ザ・女』と『ザ・男』同士であれば、下世話な本になっていただろうし、『ザ・女』ではない女性と『ザ・男』ではない男性同士であれば、異性間の違和感を解き明かすのではなく、自分の内側で渦巻いている『何か』の輪郭を見せ合うだけになってしまいそうな気がする。本書が、同じタイプ同士ではない男女の往復書簡によって成り立っているからこそ、普遍的な面白さを獲得しているのではないか、ってのは考えすぎかしらん。

感想

本書は、確かに恋愛がベースになっているのだけれども、結果的に表出される本質は、決して恋愛だけに限らない、普遍的な男女論になっていると思う。これは、恋愛ばかりではなく、仕事や家族や、他のありとあらゆる『異性』と関わる事柄に、何らかの参考になるのではないかと思う。目から鱗が落ちる部分も、人によって箇所は全然違うだろうけど、本書の中にたくさん出てくるだろうと思う。是非読んでみてください。

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  • 角田光代

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