生きていてもいいかしら日記(北大路公子)の書評・感想

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生きていてもいいかしら日記 (PHP文芸文庫)

本書は、北海道在住、実家暮らし、体脂肪率40%で、時折文章を書く仕事をしながら基本的にグダグダだらだらと過ごしているフリーライター(と呼んでいいのか?)の著者による、グダグダな毎日を書き綴ったエッセイです。「サンデー毎日」に連載されていたものを書籍化したものの文庫化のようです。
この人は、基本的にはまあずっと酒を飲んでいる。昼酒なんてしょっちゅうで、夜は必ず飲んでいる。一人でも飲むし、友人とも飲むし、とりあえず酒が飲めればどんな状況でもいい。もうとにかく、酒を飲む話が出てくる出てくる。でも不思議と、酒を飲んで失敗したって話は、そんなにないのだ。著者にとって酒を飲むというのはもう日常の背景のようなもので、それを書かないということは、絵を描く時のキャンバス地が存在しないようなものなのかもしれない。
そして著者は、とにかく基本的にグダグダしている。物書き以外の仕事はしていないようである。実家ぐらしで、家事全般も特にするわけでもない。起きたい時に起き、寝たい時に寝、酒を飲みたい時に飲むという、なんとも優雅な生活を送っている。
かつてブログでも文章を書いており、やがてこうして雑誌連載や本に文章がまとまってくるのだけど、どの時にも、「そんなダラダラとした生き方が出来るはずがない」とお叱り(?)のコメントが来るそうだ。でも、実際著者に会った人は、「読んだイメージよりもさらにダラダラしていて驚いた」という反応になるらしい。どんだけグダグダなんだ!
そんな、本当に何をしているわけでもない著者は、日常の中で考えるアホらしい発想や思考、奇妙な友人たちとの出来事、両親についてなどなど、自分の半径5メートル以内で起こる事柄だけを中心に、週に一回エッセイを書いている。それまとめた作品です。
いやはや、面白かったなぁ。ホントに、こんなにダラダラ生きられるものなのか!っていう感動がある。子ども向けの伝記本の話から、キュリー夫人の「肉」の話になり、そこから、『世の中には努力して頑張っている人がこんなにたくさんいるのだから、私はそれほど頑張らなくてもいいや、という人生観をしたり確立した』なんていうぶっ飛んだ結論を引き出す話があるんだけど、これだけ力を抜いても生きていけるってのは羨ましいなぁと思います。
僕も、どちらかというとそういう、グダグダして努力しないで生きていきたい人間なんですけど、どうも駄目なんですね。それは、本書のあるエッセイの中で書かれていた、『風邪て学校を休んだ小学生がそれをきっかけに不登校になってしまう、という恐怖感に通じる』という話になんか近い気がする。一度堕落してしまうと、二度とは戻れないだろう、という予感がある。著者は、その予感を恐れなかったし、実際に堕落した今も(なんていう表現は、失礼かしら 笑)、そのことに後悔しているわけではない。いやー、羨ましいですなぁ。そこまで堕落を極められるというのは、ある種の才能だなという感じがします。羨ましい。
とにかく著者は、普通公開しちゃうのは恥ずかしいだろう話もバンバン出してくる。なんか、凄くホッとする。なんか、まだ自分大丈夫だな、なんて気がするんだよなぁ。まだまだ下がいるんだ、なんてことではなくて、なるほどこんな選択肢もありっちゃありなんだな、という風に思わせてくれるのがいい。もちろん、ダラダラ生活していることは、素晴らしいことばかりではなかろう。両親や妹など、身近にいる人の寛大な理解があってこそ成り立つ部分のあるだろうし、社会とまるで接点を持たないわけにはいかないから、その接点付近では色々と擦り切れもするだろう。

感想

とはいえ、著者もまたカッコに入れられる存在だろうとは思うよ。両親からすれば『娘』だし、妹からすれば『姉』だし、架空の夫からすれば『妻』だろう。これほど、何かに当てはまらない人間というのも、なかなか凄まじい。特に妹は、幼稚園の母仲間らから、「姉って何なの?」という疑問を常に投げかけられるそうな。すげぇな、姉。
読んでるとなんか、「大丈夫!」という気になれる作品です。タイトルの「生きていてもいいかしら」という問いに、「いいんだよ」と答えるまさにそれが、自分の心にも響いてくるような、そんな作品だなという感じがしました。是非読んでみてください。

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